障子貼替
自分でやってみようの一番はおそらく障子の貼替ではないでしょうか。
子供のころ母に連れられて田舎(埼玉県)に遊びに行った時、初めて障子の貼替を見ました。田んぼの脇を流れる小川の中に障子を浸(つ)けてタワシで洗っていました。
今の仕事に就いて解ったのですが、この障子紙の剥がし方は障子本体を削っているようなものです。桟(さん)や組子がガタガタになってしまいます。
障子の貼替方法はプロの経師屋でも十人十色、正しい貼替方法は存在しないのではないでしょうか。
以下は私の(一応プロの)障子貼替レポートです。
今回は上げ下げ部分の付け外しの説明も兼ねて猫間(ねこま)障子の貼替をレポートします。
01.
猫間障子は一部分が上下あるいは左右に動く障子です。
この障子は上下に動く一般的なタイプです。
左右に動くタイプは関西に多いそうです。
02.
今回貼り替える障子です。
障子の一部が上下に動く一般的な猫間障子です。
確認しながら猫(動く部分の障子)を外してみましょう。
03.
左右の框(かまち)に細い溝が掘ってあり、その中に障子が収まっています。
よく見ると左右の溝の深さが違います。
04.
左側の溝は少し深く、中に納まっている障子との間に少し隙間があります。(写真左)
そこで隙間の空いている左側に障子を押します。(写真右)
05.
写真の感じで左に押します。
06.
すると右側の浅い溝から障子が外れるので手前に引きます。
07.
障子が外れました。(写真左)
外した障子をよく見てみましょう。(写真右)
08.
深い溝に納まっていた左側には上下2ヶ所にバネが入っています。(写真左)
バネの上に元に戻すときの為に本体障子の番号を付けて置きます。(写真右)
浅い溝に納まっていた右側には何もありません。
09.
“障子貼替は剥がすのが仕事” そう教わりました。
それでは剥がし始めます。
始める前に立てかけた障子の下に2本の細い角材を入れて本体を持ち上げます。底面が水に触れない様にして障子紙の接着面(裏側ですね)を噴霧器で濡らします。
噴霧器が無ければスポンジや雑巾などで濡らします。
10.
少し時間を置いて古い糊を柔らかくしてから剥がし始めます。
手で簡単に剥がれる時もあるし。(写真左)
ヘラなどで少しずつ剥がさなければならない時もあります。(写真右)
11.
前に貼られた方は、間違いなくプロですね。
引っ張るだけで剥がれました。(写真左)
剥がした後は、水(又はお湯)を絞った雑巾でホコリも取りながら掃除します。(写真右)
引手周りの手あかの汚れや、経年劣化による灰汁(あく)や黒ずみをキレイにするのは障子貼替ではありません。
それは障子の灰汁洗いで別業者の仕事です。
たぶん障子貼替より単価は高い。
12.
ガラスは注意して掃除しましょう。(写真左)
これで乾き待ちです。(写真右)
13.
剥がし終わった障子が乾いてから、新しい障子紙を貼ります。
糊の濃さをお話しします。
障子紙は経年劣化で貼替が必要になります、従って糊の濃さは貼り替える事を前提にして「剥がれない程度に薄く」と考えます。
以前は糊の濃さを尋ねられると「牛乳とヨーグルトの中間位」と答えていましたが、飲むヨーグルトが一般的になってからは「剥がれない程度に薄く」に変わりました。
具体的な濃さは貼る紙質にもよりますので私の文章力ではうまく表現出来ません。
14.
皆さんは入手した障子糊の説明書に従って糊付け。
私は糊刷毛で糊付けです。
もっと簡単に糊付け出来ないか試しましたが結局 糊刷毛ですね。
15.
① 貼り始めを決めて障子紙を置きます。(写真左)
② 定規(透明のアクリル製で分かりにくいですが)を載せて紙の端を押さえ。(写真右)
16.
③ 貼り終わりまでゆっくり転がして別の定規を載せて押さえ。(写真左)
④ 余裕を見て少し大きめにカットします。(写真右)
17.
⑤ 糊付け部分を軽くなぜ、四方にヘラを入れます。(私はほとんど爪を使います)
18.
⑥ 糊代(のりしろ)の際(きわ)に定規をセットして。(写真左)
⑦ カッターでカットします。(写真右)
糊で濡れている薄い紙を切ります。カッターの刃先はケチらずこまめに折りましょう。
19.
⑧ カット後に不要部分を注意して取り除きます。
完全にカットされていない部分もあるので勢いよく剥がしてはいけません。
20.
⑨ このようにカットした後、糊を乾かします。
障子を動かす場合は剥がさないように注意して下さい。
21.
今回貼り替えた障子紙は、巾95㎝×長さ60m巻のロール紙です。
22.
完全に乾いたら本体から外した猫を取り付けます。
- 番号を確認して。
- バネのついている側を先に深い溝に収める。(写真左)
- 障子をバネ側に押して反対側を浅い溝に収める。(写真右)
障子に少しプレッシャーが掛かるので取り付けは糊が完全に乾いてから行う。
23.
最後に霧吹きです。
障子紙メーカーは霧吹きを推奨していません。
理由は霧吹き後、乾いた時に収縮し過ぎて問題が起こりやすいからです。
例えば霧吹き後、日当たりの良い場所では障子が反ってこすれたり、障子紙が裂けてしまう場合もあります。
この障子は日光が直積当たらない廊下に面した場所なので軽く吹きました。
私は出来るだけ霧は吹きませんが、吹く時は控えめに吹き過ぎに注意します。
24.
障子を通した光は柔らかく日本人のセンスの良さを感じます。
あとがき.
障子は建具に紙を1枚貼っただけの構造です。
その貼替はシンプルなだけに奥が深く、いまでも貼り替える障子の状態によって試行錯誤が続いています。
ご覧頂き ありがとうございました。
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