和室聚楽壁をクロスに変更
“和室は洋間より金が掛かる” 大工の棟梁が話し始めました。
私が職人になりたての頃、現場で3時のお茶の時でした。
何にお金が掛かるのか聞いていると、洋間と比べて和室は素材と素材を加工・設置する職人の手間に金が掛かると話を続けました。
少し説明しましょう。
当時の室内の仕上げは、
当時の和室
天井:無垢材(むくざい)や、突板(つきいた)の天井板を大工さんが手の油が付かないよう手袋をして仕上げた。
- 無垢材→ 100%自然木。
- 突板→ 表面に薄くスライスした自然木を貼り付けた合板。
壁:左官屋さんがラスボードにモルタルを下塗りし、数日乾かして聚楽(高級品)や繊維壁(普及品)などを上塗りして仕上げた。
- ラスボード→ 塗り壁用の下地材。
- モルタル→ セメントと砂を水で練ったもの。
柱:ほとんど露出するため素性の良いものを選んで、予算があれば塗装屋さんが表面にワックスを掛け手垢などの汚れが付きにくく仕上げました。
当時の洋間
天井・壁:石膏ボードかベニヤ下地に壁紙を貼って仕上げましたが、天井と壁の境に廻り縁を取り付けたり、目透かし(めすかし)を加工したりしました。
- 目透し→ わざと開けた小さな隙間
柱:洋間の場合、必要がなければ露出させません。
最近の室内の仕上げは、
最近の和室
天井:木目をプリントした合板か、石膏ボード下地に木目・目透かし柄をプリントしたビニールクロス。
壁:石膏ボード下地に聚楽や和紙柄などをプリントして本物に似せたビニールクロス。
柱:木造住宅では集成材、マンションではほとんど設置されません。
最近の洋間
天井・壁:ほとんど石膏ボード下地に壁紙を貼って仕上がりです。これ以上の簡素化は下地のままの仕上げになってしまいますね。
柱:洋間の場合、必要がなければ露出させません。
日本のコピー技術は高いと思いますが、それでも本物と並べて比較すると質感の差は一目瞭然です。探せばリアルな素材があるかも知れませんが、おそらく高価で一般的ではないでしょう。一般的的でなければ、それは安価なコピー材料ではなく高価な新素材だと思います。
さて今回は和室の「質感豊かな聚楽壁」を「織物調ビニールクロス」に変更するレポートです。
なぜ「質感豊かな聚楽壁」を ダウングレード するのか?
実はこの作業結構あるんです。それは聚楽壁は少し強く擦る(こする)と表面がポロポロ削れ落ちてしまうのです。箒(ほうき)ではそれ程でもないのですが、掃除機は注意しないと壁面下の聚楽が削り取られモルタル部分が露出してしまいます。
【クロスへ変更の作業手順】
- 室内を片付ける。
※ 出来るだけ空にする。 - 襖・障子・畳を養生する。
- 聚楽壁を噴霧器などで湿らせ時間をおいてケレンして剥がす。
※ モルタル下地にする。 - モルタル下地全面にクロス用仕上げパテを塗る。
- パテの乾燥を待って新しいクロスを貼る。
- 室内を元に戻す。
仕上がって1日位乾燥させてから荷物を戻すとカビ発生のリスクを減らせます。
それでは「和室聚楽壁をクロスに変更」のレポートです。
01.
写真は室内を片付け、畳を養生して。
戸襖は壁と同じクロスに貼り替えるため、養生無しでセットしたままにしました。
スイッチ・コンセントのプレートを外して。
聚楽壁を噴霧器で湿らせ、一部(写真の右上)スクレッパーで剥がしてモルタル下地を出したところです。
室内の片付けに手間取り現状写真を撮り忘れたためこの状態からスタートします。
スミマセン。
02.
写真は、01写真の右上壁の続きをケレンしている所です。
03.
聚楽の剥がし作業を具体的に説明すると。
水が掛かってはいけない場所を養生して。
噴霧器などで壁を湿らせ。
少し時間をおいて聚楽を柔らかくして。
04.
スクレッパーなどで聚楽を削り落として、モルタル下地にする。
05.
その後、クロス用の上塗り(仕上げ)パテを水で練って。
06.
練り終わったパテをパテベラでモルタル下地全面に塗ってゆきます。
07.
パテはモルタル下地の凸凹を埋めて、貼り替えるクロスの糊が接着するよう出来るだけ平らに近く仕上げます。
08.
全面にパテを塗り終わった写真です。
左官屋さんほど上手くはありませんが、まあまあの仕上がりです。
これで乾きを待ちます。
09.
翌日の写真です。
パテは石膏ボード色(ベージュ)です。
マットな仕上がりで「このままでいいんじゃない」と思いましたが作業を進めます。(自画自賛)
10.
次はクロスを貼る準備です。
写真は上が糊盆と糊刷毛、下がガードテープ。
糊盆にはクロス用の糊が入っています。
ガードテープは濡れると両面に接着力が出る切手のような薄い紙テープで、壁紙のジョイント部分の補強用です。
11.
準備作業は壁に軽くサンドペーパーを当てパテのバリを取ってから。
ジョイント部分の墨(目印)を出し、その墨に糊刷毛でクロス用の糊を塗り。
そこに幅の中心が来るようガードテープを貼ります。
12.
写真のようにガードテープを貼って乾燥させます。
壁にガードテープを貼った場合はテープの糊を乾かした方がクロスが貼りやすいです。
13.
ジョイント部分のクロス貼りです。
写真は右側のクロスをジョイントの隅に合わせて先に貼り。
次に左側のクロスを重ねないでピッタリ合わせて貼ります。
14.
このように仕上がります。
「突きつけ」というジョイント処理です。
詳しくは「天井・壁のクロス貼り」ページ №32~34をご確認下さい。
15.
壁を貼った後、たたみの養生を剥がして、同じクロスに貼り替えた戸襖を納めて完成です。
明るくなりましたね。
リフォーム前の現状写真を撮り忘れたことが悔やまれます。
あとがき.
このリフォームは難易度が高いだけでなくご家族の理解と協力が必要です。従ってDIYはお勧めしません。
この仕事の依頼主には別の理由でお勧めしませんでした。
理由は2つです。
- 元の聚楽壁には簡単には戻せない。
- 次のクロスに貼替時、パテがクロスといっしょに剥がれて更なる下地補修が必要になる可能性がある。
全面パテによるクロス仕上げへの変更は、建て替え予定がある短期使用の場合は問題ありません。
しかし長く建物を使用する場合は大工さんにベニヤ板か石膏ボードを貼ってもらい、クロスの貼替が出来るようにすることをお勧めします。
今回は大工さんの木工事が予算オーバーのため全面パテ処理になりました。
次回クロス貼替のご依頼があれば、やさしくクロスを剥がします。
ご覧頂き ありがとうございました。
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