古いダンボール襖のリフォーム
障子の貼替は作業レポート集で公開しましたが、「襖の貼替」はレポートする気はありませんでした。
なぜかというと
「障子」は、建具に紙を1枚を貼っただけのシンプルな構造ですが、「襖」は、いろいろなタイプが混在しているからです。
例えば、縁(ふち)の取り付け方法だけでも数種類ありますし(当然 取り外し方法も)、本体の内部構造も多種あります。
それら全てレポートすることはもちろん、説明することさえ私には出来ません。
ところが
現在混在している「襖の構造」を分かりやすく説明しているサイトを発見しましたので皆さんにご紹介します。
このサイトより、「襖の内部構造」ページを下のボタンに外部リンクしました。
興味のある方はご覧下さい。
今回、多種ある襖の中から「ダンボール襖」をレポートすることにしました。
上記【日本の内装材料辞典】「襖の内部構造」ページ、5番目に紹介されています。
構造が簡単で本来は貼替ではなく交換するべき(私見です)ダンボール襖を補修した後、貼り替えるのではなく重ね貼りでリフォームしたレポートです。
ダンボール襖は、以下の通り解説されています。
(5)ダンボール襖
量産襖の代表的な襖です。3層ぐらいに重ねたダンボールを芯材として、一番上のダンボールの両面には、湿気防止用のアルミ箔が貼られています。この襖は、張り替えがしにくいという欠点をもっていますが、芯材を機械生産することができるためコストが安くすむという大きな特徴もあります。
【日本の内装材料辞典】より転載
現場は2LDKの賃貸マンション和室内ダンボール襖。
交換ではなく貼替になったのは予算の都合です。
それではレポートを始めます。
01.
LDKから見た和室入口の巾広・丈長のダンボール襖です。二本溝の引き違いで、一本引きのように左壁に全て収まるタイプで全開できます。
これを戸襖で作ったら、かなりの重量になると思いますね。
02.
襖を全開して和室内を見た写真です。
和室は6畳で、写真右側に天袋付きの押入、左側には見えませんがベランダへ出入り可能な掃き出し窓に障子が付いています。
襖は全て巾広ダンボール襖で巾は約120cm。
03.
ベランダ側の障子を背にして室内を見た写真です。
写真右端は引手が写っていませんが「襖」です。
壁のように白く見えますが、おそらく今までお住まいの方が入口全開でお使いのため、重なっていた下側の襖面が紫外線の影響を受けず、そのため白いと思われます。
リフォーム方法は以下の通りです。
- 縁・引手は外しません。(切り抜き)
- 襖紙は剥がせません。(重ね貼り)
- 襖の反(そ)りによるコスレを補修。
- これからの反りを少しでも小さくするため、押入も含めて全ての襖の表・ウラ 両面に同じ材料を貼ります。
- 今回は襖紙ではなく壁と同じビニールクロスを貼る事になりました。
04.
内部構造をお見せするため押入の引手を注意しながら外しました。ご覧のようにボンドで止めてあります。内部構造はダンボールを数枚重ねてあるだけで、框(かまち)や組子のように芯になるものは入っていません。
重ねたダンボール数枚が芯、ということですね。
引手は速乾ボンドで付け直しました。
05.
襖の反りによるコスレを確認します。押入を左に開けて2本の襖を重ね、横から撮った写真です。
少し判りにくいですが、引手付近の中央部分の縁2本が接触して、くっ付いています。
06.
襖を半分閉めて押入内から襖の裏面を撮った写真です。
和室側襖の裏側中心部分が膨らんで、押入側襖の縁にコスレて傷が付いています。(写真中央下部分)原因は、和室内の湿度より押入内の湿度の方が高く、押入内側のダンボールが膨張しているからです。
このまま放置して膨らみが進むと、開閉が困難になります。
07.
入口の襖も確認します。
襖を2本重ねた状態では問題無さそうに見えますが。
08.
和室側の襖を半分くらい閉めるとLDK側の中央付近の膨らみが、もう1本のLDK側の襖の縁に接触しています。
このまま放置すると押入と同じように膨らみが進み、やがてコスレて開閉が困難になります。
09.
現状が確認出来たので襖の反りを最初に補修します。
お断りして置きますが、窓ガラスのように平面に近く補修は出来ません。あくまで2本の襖がコスラず、スムーズに開け閉め出来る程度に補修します。
写真は50m巻の壁紙原反が包装されていた紙袋(クラフト紙)です。このクラフト紙を使ってダンボール襖の反りを補修します。
補修の手順は以下の通りです。
- この紙袋を広げて。
- 必要と思われる大きさにカットして。
- 全面に糊を付け2~3分置いて紙を水分で膨張させる。
- 襖の膨らんでいる面に貼り付けます。(次の写真参照)
- 貼り付けたクラフト紙が乾燥すると収縮して張力が発生し、反りを元に戻す力となります。
10.
このように貼り付けて乾燥させ、反りを平面に近く戻し、敷居で開閉してコスラないか確認します。
この現場での作業は、襖の膨らんでいる面にクラフト紙を貼り付け一晩乾かして、翌日に開閉を確認して、さらに何本かの襖に追加でクラフト紙を貼り、もう1日乾燥させて良しとしました。
(正確には妥協しました)
平面に近く補修するのは非常に難しい、まるで「火であぶったスルメイカを平らにしている」ようでしたね。
11.
補修が確認出来てから、襖紙を貼ります。
今回はビニールクロスですので、道具も貼り方も壁面を貼るのと同じです。
注意点は、
- ビニールクロスの有効巾は約90cmです。
- 今回貼り換える襖は全て「幅広」で、巾は約120cmです。
- したがって1巾では足りず2巾で貼る事になります。
写真は、押入表(おもて)面の右側を貼り終えた所です。
引手は切り抜きです。
12.
続けて左側を突き付けで貼ります。
押入裏面も同じビニールクロスを貼ります。
突き付けの方法は、
「作業レポート集」『天井・壁のクロス貼り』ページの 32~34 項目で説明しています。
下にページをリンクします。
押入を含めた全ての襖両面に同じビニールクロスを貼ります。
13.
壁紙も貼り替え、畳も新しくなり和室の完成です。
障子も写真では見えませんが貼り替えました。
あとがき.
DIY襖紙の解説書で貼替にトライされてギブアップしたお客様から、その「襖の貼替」をご依頼頂いたことが何度かありました。
ギブアップの原因は、前書きで説明したように「いろいろなタイプ」の襖が混在しているからです。「全てのタイプの襖貼替解説書」をDIY襖紙に付属するのは不可能でしょう。「いろいろなタイプの襖」が混在する現状が、新築で和室が減っている現状の中でこれからどのように変化してゆくのか。
私はコンビニおにぎりの開封方法のように「いろいろあったタイプ」が集約されてゆくことを願います。
最後に、繰り返しになりますが「ダンボール襖」は基本的に使い捨ての襖(私見です)だと思います。
ご覧頂き ありがとうございました。
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